社労士 渡邊のコラム
労働判例から③(脳 心臓疾患 自殺)[東京横浜 社労士]2018年2月9日更新
◆補佐人制度による弁護士との連携
社労士は補佐人として、個別労働関係紛争に関する民事訴訟の場面や、労働社会保険に関する行政訴訟の場面で、弁護士とともに裁判所に出頭し、意見を陳述することができます。依頼者は、相談の段階から支援を受けてきた社労士が、補佐人として弁護士とともに訴訟の対応にあたることで、安心して訴訟による解決を選択することができるようになります。
◆判例による紛争解決の重要性
労働法の基本は労働基準法ですが、社会の変化により、現在の法令では対応できない紛争も発生します。また、労働法の解釈は抽象的であり、事案ごとに具体的な法解釈が必要です。そのため、判例によって労働事件の解決を図ることが重要になるのです。
◇安全配慮義務
過重労働により、労働者に脳・心臓疾患が発症(または死亡)した場合や過労自殺をした場合、使用者は、その労働者や遺族から、不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき損害賠償責任を追及される可能性があります。この安全配慮義務は明文化され、労働契約法により「使用者は、労動契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。
◇過労の脳・心臓疾患
労働者やその遺族は、労働者災害補償保険法(または労働基準法)に基づく補償を求めることができます。また、労働者やその遺族から使用者に、不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償の支払いを求めることもできます。
使用者への損害賠償請求では、債務不履行の事実と労働者の損害との間に相当因果関係が認められるかが問題となります。そのため裁判では、発症時期の精神的・身体的負荷、長時間労働の疲労蓄積の有無・程度を考慮して、過重労働に重点をおいた判断となることが多いです。
◇過労自殺
過労自殺は、労動時間・仕事内容・責任の過重などにより、著しい心理的負荷となった労働者が精神障害を発症し、自殺に至ることです。
最高裁は長時間労働に従事する労働者がうつ病になり自殺した事案について、業務量の適切な調整等を行う義務の違反を理由とした、使用者の不法行為に基づく損害賠責任を肯定しています。なお、労働者本人の性格・心因的要素を考慮して、損害賠償額の減額が認められた裁判例もあります。
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