社労士 渡邊のコラム

フォローアップ/心の健康問題休業労働者の職場復帰支援手引き8

メンタルヘルス対策相談(専門社会保険労務士・産業カウンセラー)

 

(5)職場復帰後のフォローアップ<第5ステップ>

心の健康問題には様々な要因が複雑に重なり合っていることが多いため、職場復帰の可否の判断や職場復帰支援プランの作成には多くの不確定要素が含まれることが少なくない。また、たとえ周到に職場復帰の準備を行ったとしても、 実際には様々な事情から当初の計画通りに職場復帰が進まないこともある。そのため職場復帰支援においては、職場復帰後の経過観察とプランの見直しも重要となってくる。
職場復帰後は、管理監督者による観察と支援の他、事業場内産業保健スタッフ等による定期的又は就業上の配慮の更新時期等に合わせたフォローアップを実施する必要がある。フォローアップのための面談においては、下記のアからキまでに示す事項を中心に労働者及び職場の状況につき労働者本人及び管理監督者から話を聞き、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行っていく。
さらに、本人の就労意識の確保のためにも、あらかじめ、フォローアップには期間の目安を定め、その期間内に通常のペースに戻すように目標を立てること、また、その期間は、主治医と連携を図ることにより、病態や病状に応じて、 柔軟に定めることが望ましい。
なお、心の健康問題は再燃・再発することも少なくないため、フォローアップ期間を終えた後も、再発の予防のため、就業上の配慮についての慎重な対応(職場や仕事の変更等)や、メンタルヘルス対策の重要性が高いことに留意すべきである。

ア 疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認

フォローアップにおいては、疾患の再燃・再発についての早期の気づきと迅速な対応が不可欠である。事業場内産業保健スタッフ等と管理監督者は、労働者の状態の変化について適切なタイミングで対応できるよう日頃から連携を図っておく必要がある。

イ 勤務状況及び業務遂行能力の評価

職場復帰の様子を評価するのに重要な視点であり、労働者の意見だけでなく管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行う必要がある。
職場復帰後に、突発的な休業等が職場復帰決定時に想定していた程度を超えるような場合は、事業場内産業保健スタッフ等が面接を行い、主治医と連携をとりながら、適切な対応を検討すべきである。 

ウ 職場復帰支援プランの実施状況の確認

職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかについての確認を行う。予定通り実施されていない場合には、関係者間で再調整を図る必要がある。 

エ 治療状況の確認

通院状況や、治療の自己中断等をしていないか、また現在の病状や、今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞き、必要に応じて労働者の同意を得た上で主治医との情報交換を行う。
その場合には、主治医から就業上の配慮についての見直しのための意見を、治癒又は就業上の配慮が解除されるまで、提出してもらうことが望ましい。

オ 職場復帰支援プランの評価と見直し

様々な視点から現行の職場復帰支援プランについての評価を行う。何らかの問題が生じた場合には、関係者間で連携しながら職場復帰支援プランの変更を行う必要がある。

カ 職場環境等の改善等

職場復帰する労働者が、よりストレスを感じることの少ない職場づくりをめざして作業環境、作業方法などの物理的な環境のみならず、労働時間管理(長時間労働や突発的な時間外労働の発生等)、人事労務管理(人材の能力・適性・人間関係等を考えた人材配置等)、仕事の方法(サポート体制・裁量権の程度等)等、労働者のメンタルヘルスに影響を与え得る職場環境等の評価と改善を検討することも望まれる。また、これら職場環境等の評価と改善は、管理監督者や同僚等の心の健康の保持増進にとっても重要である。
職場環境等の改善等のために、「職業性ストレス簡易調査票」、「快適職場調査(ソフト面)」、「メンタルヘルスアクションチェックリスト」等の活用も考えられる。

キ 管理監督者、同僚等への配慮等

職場復帰する労働者への配慮や支援を行う管理監督者や同僚等に、過度の負担がかかることがないように配慮することが望ましい。
また、管理監督者、同僚等に対し、心の健康問題や、自殺の予防と対応に関する知識を含め、ラインケア、セルフケアを促進するための教育研修・情報提供を行うことが望ましい。(6-(6)参照)
円滑な職場復帰には、家族によるサポートも重要となる。しかし、本人の心の健康問題が家族に強い心理的負担を与えていることもあり、一方で、職場復帰に強い不安と期待を持っていることも多い。このため、心の健康問題や職場復帰に関する情報提供や家族からの相談対応など、事業場として可能な支援を行うことも望ましい。なお、職場復帰の最終的な決定に当たっては、本人の同意を得た上で家族から情報を得ることも効果的な場合がある。

 

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