社労士 渡邊のコラム

趣旨/心の健康問題休業労働者の職場復帰支援手引き1

メンタルヘルス対策相談(専門社会保険労務士・産業カウンセラー)

 

平成16 年10 月    改訂 平成21年3月    改訂 平成24年7月

1趣旨

(1)趣旨

職場復帰のための対策については、平成16年10月に「心の健康問題によ り休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下「手引き」という。)が公表され、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援のための事業場向けマニュアルとして活用されてきた。

その後、平成18年の改正労働安全衛生法令に基づき、衛生委員会等の調査審議事項に「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関する と」が追加され、また、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(以下「メンタルヘルス指針」という。)が策定されるなど、職場におけるメンタルヘルス対策の推進が図られてきたところである。

一方、心の健康問題により休業している労働者が増加しているとする調査結果や休業後の職場復帰支援がスムーズに進まないという調査結果等もあり、職場復帰支援に関する社会的関心が高まっている。

このようなことから、厚生労働省からの委託により中央労働災害防止協会に設置された「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援のための方法等に関する検討委員会」において、労働者の職場復帰支援に関する新たな経験や知見等を踏まえ、より円滑な職場復帰を支援するために事業者によって行われることが望ましい事項等について検討がなされ、「手引き」の改訂が行われた。

(2)職場復帰支援の基本的考え方

ア 職場復帰支援プログラム

心の健康問題で休業している労働者が円滑に職場に復帰し、業務が継続できるようにするためには、休業の開始から通常業務への復帰までの流れをあ らかじめ明確にしておく必要がある。

事業者は本手引きを参考にしながら衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受け、個々の事業場の実態に即した形で、事業場職場復帰支援プログラム(以下「職場復帰支援プログラム」という。)を以下の要領で策定し、それが組織的かつ計画的に行われるよう積極的に取り組むことが必要である。

・ 職場復帰支援プログラムには、職場復帰支援の標準的な流れを明らかにするとともに、それに対応する手順、内容及び関係者の役割等について定める。
・ 職場復帰支援プログラムを円滑に実施するために必要な関連規程等や体制の整備を行う。
・ 職場復帰支援プログラム、関連規程等及び体制については、労働者、管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等に対し、教育研修の実施等により十分周知する。

イ 職場復帰支援プラン

実際の職場復帰支援では、職場復帰支援プログラムに基づき、支援対象となる個々の労働者ごとに具体的な職場復帰支援プランを作成する。その上で、 労働者のプライバシーに十分配慮しながら、事業場内産業保健スタッフ等を中心に、労働者、管理監督者が互いに十分な理解と協力を行うとともに、主 治医との連携を図りつつ取り組む。

ウ 主治医との連携等

心の健康問題がどの様な状態であるかの判断は多くの事業場にとって困難であること、心の健康問題を抱えている労働者への対応はケースごとに柔軟 に行う必要があることから、主治医との連携が重要となる。

また、職場復帰支援においては、職場配置、処遇、労働条件、社内勤務制度、雇用契約等の適切な運用を行う必要があることから人事労務管理スタッ フが重要な役割を担うことに留意する必要がある(なお、本手引きにおいて、事業場内産業保健スタッフ等には、人事労務管理スタッフが含まれている。)。

 (3)職場復帰支援に当たって留意すべき事項

職場復帰支援に当たっては、特に以下の点について留意する必要がある。
・ 心の健康問題の特性として、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題や、心の健康問題自体についての誤解や偏見等解決すべき問題が存在していることに留意の上、心の健康問題を抱える労働者への対応を行う必要があること。
・ 事業場においては、計画的にストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識や心の健康問題に対する正しい態度など、メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供を行うことが重要であること。
・ 職場復帰支援をスムーズに進めるためには、休業していた労働者とともに、その同僚や管理監督者に対する過度の負担がかからないように配慮する必要があること。
・ 家族の理解や協力も重要であることから、家族に対して必要な情報を提供する等の支援が望まれること。

 (4)本手引きの適用に当たっての留意点

本手引きには、実際の職場復帰に当たり、事業者が行う職場復帰支援の内容が総合的に示されている。

本手引きが対象とする労働者は、心の健康問題で休業した全ての労働者であるが、第3ステップ以降の職場復帰に関しては、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者(すなわち軽減又は配慮された一定レベルの職務を遂行でき、かつ、想定される仕事をすることが治療上支障にならないと医学的に判断されるもの。)を対象としている。

なお、本手引きの基本的な記述においては、心の健康問題として、治療によって比較的短期に寛解するものが想定されている。その他の心の健康問題については、異なる対応をとる必要がある場合もあることに留意するとともに、主治医との連携が重要となる。手引きの趣旨をその事業場の状況に活かすためには、これらのことを念頭においた上で、事業者の判断と責任の下で、どのように対応すべきかが十分に検討されて行われるべきである。

また、職場復帰支援の具体的な手法については、本手引きによるほか、公開されている様々な文献、事例集、報告書、研修会等を活用・参考にすることが望まれる。

 

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